台湾国際離婚事情について取材を受けました。
(取材者:西牟田靖、2021.7.23)
取材された内容(記事の一部):
【日本と台湾の差が如実に表れているが、共同親権であれば、福原元夫妻が記したように「子供たちへの影響を減らすこと」は可能なのだろうか。
趨勢法律事務所(台北)の代表弁護士である徐崧博氏に台湾の離婚事情について聞いた。
――日本では、離婚届にお互い押印し、サインすることで、成立する協議離婚が全体の約9割です。台湾はどうですか。
お互いにもめることがなければ、協議離婚が主流です。離婚届に2人がサインし、判を押して提出すれば離婚が成立します。一方、もめれば裁判や調停での離婚となります。裁判離婚になるとお互い、主張の応酬となり、何年もかかってしまう。泥沼化することが珍しくないという点でも日本と変わりません。
日本と台湾の違いは、共同親権がある点です。台湾の共同親権の制度は1996年の法改正で完備されました。それ以降、協議離婚、裁判離婚を問わず、共同親権という選択肢はよく選ばれます。もちろん、かなりもめていれば双方が単独親権を主張したりしますが。
――共同親権になるとどう違うのですか?
DV、親が犯罪者である場合などは共同親権が認められない場合もありますが、日本のように、すべて単独親権ということはありません。例えば、銀行口座の開設、進学先をどこにするのかといった、法律上、子どもの人生の重大な選択において、共同親権者である2人の合意が必要になります。しかし、共同親権が採用されても、主要扶養者という概念があります。主要扶養者は、普段と子どもと一緒に生活して、日常生活に関わることについては、主要扶養者に決定権があります。
――離婚後の養育については、欧米のように、両親がそれぞれ一週間交代でといった感じなんでしょうか?
協議離婚の場合、子どもに関する養育計画のある離婚協議書を持って区役所で離婚登記できるので、実際の養育計画は個々の自由裁量となります。裁判離婚の場合、裁判官は、今まで双方の生活状況を十分踏まえた上で総合的に養育計画を決定します。共同親権であれ、単独親権であれ、一方は普段の主要扶養者として子どもを養育し、一方は指定されている時間帯で子供と面会、過ごせるというケースが最も多いです。養育計画があっても、事後的にもめているケースでしたら、養育計画を一方が守らないというケースも珍しくありません。
――国際的な離婚の場合は?
一緒に住んでいなくても、小学生、中学生までの間は台湾、その後は日本といった形で養育を進めたり、夏休みや冬休みといった長期休暇のときに普段一緒に住んでいない親とすごしたり、というケースを今までに見てきました。
――「連れ去り」についてはいかがでしょうか。日本の場合、別れるにあたって相手方の同意を得ずに子供を連れて家を出る「連れ去り」が近年、社会問題化しています。
片方の親に内緒でもう片方の親が「連れ去り」を実行すると、誘拐罪で起訴される可能性があります。台湾で公開されている過去5年間の刑事判決の中で、片方の親が子どもを連れ去ったことを理由として、誘拐罪に該当する有罪判決が10件以上あります。しかし、ハーグ条約に加盟していない台湾から外国へ子どもを連れ去られても、台湾当局は何もできない可能性が高いです。もちろん台湾に戻ってこられたら、話は別ですが。 】
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